昔のキカイはおしなべて単純明快で、ミシンは中学生でも理解できる構造だったし、洗濯機は回す時間をセットするだけ、ガス台などは点火もマッチを擦って火を近づけたタイミングでコックを捻りました。火力の調節も同じコックを回してガスの量を調整しますが、火を弱めすぎると「ボン」と大きな音がして火が消えてしまいます。まあ、使い手の技量しだいではすばらしい活躍をしてくれるというようなものだったのですが、最近のキカイときたら安全のためとか快適で失敗がないようにとか言いながら、使い手をまったく信用していないらしく、最近新しく導入したガス調理器具なんぞは、勝手に火が強くなったり弱くなったりするので閉口しています。説明書によると一定の温度で調理できるようにセンサーが取り付けられていて、「火力を自動調節します」と、自信たっぷりです。しかし調理する側から言うと実に煩わしく、せっかくフライパンを熱しようとしているのに急に火力が落ちたり、ごく弱火でじっくり焼きたいのに、ふと気が付くといつの間にか強火になっていて焦げてしまったり、まるでへたくそなアシスタントが余計な手出しをしているようなのです。おそらくこういった機器を設計する人は普段台所に立つことが少なく、主婦の調理の何たるかがお分かりではないのでしょう。
シャワートイレにはいくつものボタンやスイッチが付いていて、日付や時間まで表示されますが、今まで一度も使ったことの無い機能もあるし、なぜか時刻が少しずつ遅れるため、時々合わせてやらなければならず、そもそもトイレに時刻や日付の表示が必要なのかと毒づきたくなります。洗濯機も最近のモデルにはどれも乾燥の機能が付いていますが、幸いこのあたりは空気もきれいだし、梅雨の時期以外は晴れの日も多いので、洗濯物は外に干すのが普通です。だいいちヒーターで乾燥させると電力を無駄に消費しますから、この機能を使うことはほとんどありません。ただ、これまで使ってきた全自動洗濯機はどれもしばらく使っていると洗濯槽の中に黒いカビのようなものが発生し、忌々しいことにそれが洗濯物に付着し、洗う前よりさらに汚れてしまうことがよくあります。そんな時は酸素系のクリーナーを使って洗濯槽の掃除をしたあと、このヒーターで乾燥させるとしばらくは快適ですが、昔の洗濯機はこんな手間は必要なく、もっと上手に汚れを落としてくれたような気がするのです。
車も最近のはやたらと警告音が鳴り、慣れないうちはほんの少しセンターラインなどをオーバーしただけでけたたましい音が鳴ってかなり動揺したものです。こういったお節介家電は今後ますます増えていきそうですが、進化についていけない我々中高年は「うるさい、自分でやるからあんたは黙っておいで」などと、キカイに悪態をついていそうな気がします。